九州橋頭堡7



「カオス」

屠龍小僧と呼ばれたパイロットが、愛機と共に雲の果てに消えた頃。

暗殺現場の騒動は収まった。
とりあえず、外道川・米軍が介入して辺りを制したのである。

しかし・・・。

破壊された車両の中を調査した結果、泥棒田コウモリマンの死亡が確認された。
無残な遺体がそこにあった。忠実な執事もそこに横たわり、死んでいた。

だが、独裁者が倒れた時、その部下をまとめる人材は居なかった。
そして、葬儀を行う時間さえ、残されていなかったのである。

コウモリマンの死後、北九州全域で蜂起した群衆は、次第にいくつかの武装組織を生む。
それは、まさに群盗とも言える組織であった。

特に、数千の部下を持ち、米軍から奪った兵器で武装した、「八幡軍」。
その次に有力とされた「山根軍」が実力があった。

さらに、数百の兵を従えた群盗としては、「村本軍」「末定軍」「小川軍」「岡本隊」
「浜田隊」等が発生。外道川軍や米軍基地や施設を襲撃し、武器や物資を奪っていた。

末定軍の頭目である、末定建造は、倭王軍の征討将軍であるとされ、倭王勢力
の関与も考えられた。

また、小川軍の小川少佐は、旧日本軍陸軍少佐であり、武装解除された旧軍の
隠匿物資を入手して暴れ出したと言う。

浜田隊等は、旧江戸幕府軍の残党を自称していた。


しかし、最大の問題なのは、泥棒田コウモリマンを暗殺した組織であった。
この、大暴動も彼らの策であり、北九州最大勢力として登場してきたのである。

その名も、「スーパー・イラン帝国」・・・。
イランの後援を受けたと自称し、その兵力は三万とも言う。
かねてより、挙兵を考えていたようである。

暗殺後、素早く米軍の兵器廠を確保し、武装を施したと言う。
また、飛行場を襲撃し、米軍機を捕獲しようとした。
飛行場警備隊との交戦で、多くの飛行機は破壊されたが、その破壊された機体から
機銃などを外し、武装したと言われている。


現在、イラン帝国軍の主力や本拠地は不明だが、外道川・米軍の完全に支配している
地域は、幽霊館周辺以外には点在している拠点しか無かった。

協議の末、幽霊館周辺の軍隊しか指揮できていないが、北九州の司令官として、米軍
大佐である、「マイトガイ大佐」を、暫定的に就任させた。

また、非常事態として、北九州の軍事、政治をマイトガイ大佐が掌握する旨、放送を
行ったのである。

「大変な状況だが、なんとか援軍を仰ぎ、事態収拾を図りたい・・・」
年老いた、老大佐は、幽霊館の旧泥棒田コウモリマンの執務室で、力無く語った。

最初に、彼が行ったのは、泥棒田コウモリマンの遺体を、幽霊館の庭に埋め、簡素な葬儀
を形式だけ行ったことだった。

前へ  逆上陸HOME  次へ

inserted by FC2 system