九州橋頭堡31

「島原防衛線」


 話が前後するがスーパー・イラン帝国の蜂起時に天草諸島でも蜂起が起き真・日本国軍とそれを支持する地元の勢力によって掃討された。
その際、天草諸島蜂起勢は島原方面へ退却し南有馬町の原城跡に拠点を設け、北の深江村を攻囲していた真・日本国軍 島原支隊を背後から急襲。
島原蜂起勢との挟み撃ちに成功し真・日本国軍を橋頭堡のある堂崎村へ後退させた。
島原半島のスーパー・イラン帝国諸派は天草 八郎のような暴徒を恐れ支持した者や強固な反外道川派、脱走した米・外道川兵そして熱心なスーパー・イラン帝国支持者の寄り合い所帯だったが
外道川軍が支配する佐賀市から脱出した佐賀県知事が合流した事により事態が急転する。

元々九州全土で強い反外道川政権感情が生まれたのは福岡県知事 泥棒田 コウモリマンの暴政が原因だ。
九州軍司令官を兼ねていたコウモリマンは他の県知事に横柄な態度をとり本来各県に分配されるはずの予算や物資を奪い我が物とした。
それだけでは飽き足らず重税を課し九州全土から金銀財宝を集め続けた。
外道川首相が彼を福岡県知事に任命したのはその蓄財の才覚を認めたからである、九州は朝鮮半島に対する補給の最前線でありそれだけ物資や金が動く。
ここに目を付けた首相は蓄財の才以外は問題の塊である彼を派遣し予算の足しにするつもりだった。
だが蓋を開ければ東京に1銭も送らないどころか不足と催促する始末。
この事態に業を煮やした首相はコウモリマンを切って忠誠心の高い者を送るつもりだったが、猫舌派の逆上陸が始まり
瞬く間に九州南部を制圧すると言う事態に遭い、さらに混乱に乗じて知事選を強行し再選した彼を認めざるおえなかった。
コウモリマンもそれを狙っての知事選だったのだろうが、彼が再選した事により他の県知事がスーパー・イラン帝国か猫舌派に組する事を決断させた。
そして佐賀県知事も外道川政権から離反しスーパー・イラン帝国に組した。

県知事に率いられた諸派は最早烏合の衆ではなかった。
彼らは逆に堂崎村を攻囲して島原支隊の北上を阻止続け、包囲突破を諦めた支隊は島原半島を時計回りに舟艇機動を掛けて半島の付け根にある千々石町を占領し士気の維持に努めた。

 島原城に籠城している自警団から救援要請を受けた真・日本国軍は島原支隊主力を舟艇機動で島原城下へ送り込む作戦として
直接城下付近に上陸する策も考えられたが城の南にスーパー・イラン帝国側の砲台があり大口径艦砲や航空機の集中投入が望めない現状では損害が大きすぎるとして却下。
そこで島原城下と深江村の間にある島原市旧安中村付近に上陸し島原城下へ向けて北上する策を実行。
小規模な敵軍と遭遇するもこれを撃破しながら島原城の籠城勢に合流。
上陸地点から島原城下までの敵を掃討し島原半島北部のスーパー・イラン帝国諸派が南下するのを待った。

その間、主力が北上した事で手薄になった堂崎村に半島南部のスーパー・イラン帝国諸派が攻撃を仕掛けるが
逆に真・日本国側の反撃を受けて損害を被るが包囲を解かずに耐え一進一退が続く。


 巨大鉄像に対する総攻撃の為に沖合の火力支援部隊や航空部隊まで駆り出され手持ちの兵力で守らねばならない状況を待っていたかのように彼らはやって来た。
大口径艦砲の砲声が海を越えて壁のように押し寄せる最中、佐賀県知事に率いられた北部のスーパー・イラン帝国諸派が隊を連ね近づく。
お互いに降伏勧告を突き付けるが当然ながら両者は拒否、戦は始まった。
三叉槍の穂先がやって来る、それこそがスーパー・イラン帝国諸派の軍勢であり統率のとれた見事な動きだ。

それに対する巨大な盾は持ち手とでも言うべき島原城を中心に山と海へ伸び、塹壕・対戦車壕・柵・特火点を組み合わせた重厚堅固なものである。
これこそが長浜台場~島原城~元寺町を繋ぐ籠城勢の防衛線だ。
槍の柄にあたる後方から重砲の突撃前射撃が始まる。
知事は鹵獲品や寝返った部隊を手際よく運用し防衛線に頭上から砲弾を降らせた。
島原支隊も対砲兵戦を実施するが数で勝る相手の猛射に頻繁に陣地転換を余儀なくされた。

その砲撃にこのままでは押しつぶされると籠城勢は顔を青くして震えるほどに激しいものであった。
真・日本国側の百戦錬磨の猛者たちですらも勝利を危ぶむ程の状況だ。

増え続ける死傷者、弾切れを知らない敵砲兵、正午を過ぎて夕刻へ近づくが攻撃は続く。
敵機甲部隊が突撃を開始しし始めたその時、眩い光が視界を覆い間を置いて不気味な音が過ぎ去っていく。
戦闘が止まった、理解を超えた何かが起きたと誰も彼も思った。

籠城軍司令部の電話が鳴った。
長く鳴り続けている事に気が付いた士官が慌てて対応した。
「……はい?……本当ですか?……わかりました」
「何があった?」
近くにいた将官が尋ねる。
みな息をのむ中、彼は答えた。
「巨大鉄像を撃破!」
次の瞬間、籠城軍司令部は歓喜に包まれた。

スーパー・イラン帝国諸派は混乱が生じたのか引き上げて両軍にらみ合いのまま一夜が過ぎた。

 翌日

 戦闘が再開され防衛線に激しい攻撃が加えられる。
巨大鉄像が破壊されたため、派遣していた水上火力支援部隊や航空隊が戻るからそれまで手持ちの兵力で耐えれば勝機がある。
逆に島原半島の諸派は支援部隊や増援が来る前に真・日本国軍を叩き出さなければそのまま押し切られる。
相手はそれを理解しているのだろう装備の質量共に優勢である事を生かし猛攻を続ける。
風呂戸中将は指揮下の各隊の損害が着実に増え続けていることに危機感を感じていた。
ここのところ連戦続きで旧洋食軍団・旧死神軍の士気も低下し始めている。

そこへリンゴの旗を掲げた船団が近づいて来た、スーパー・イラン帝国側の輸送部隊である。
目標は防衛線の背後で孤立した味方砲台への増援だろう。
だが支隊直属の水上火力支援部隊が間に合い砲台への接近を拒れて撤退していった。
背後の砲台の存在も厄介だ、砲台から打って出られると困るので小部隊に包囲させているがこの包囲部隊が事実上の予備兵力である。

「中将、悪い知らせと良い知らせがありますかどちらから聞きますか?」
籠城軍司令部では諸将が頭を抱えていた。
「なら良い方からだ」
「後続の旧熊本隊が到着、これで西九州軍は全兵力が揃いました」
「悪い方は?」
「増援は無し、航空部隊と水上部隊は今ある部隊のみです」
安堵の息がでた直後に悪い知らせで司令部には沈鬱な空気が漂う。
「今後の方針についてだが……」
現状打開のための作戦会議が開かれた。



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