九州橋頭堡29
「降伏勧告」

悪の栄えたためしは無い。

大教祖大帝王 副棒庵 八貫坊が討たれた頃。
スーパー・イラン軍陣地が爆炎に包まれたことを確認した、対峙する
真・日本国軍陣地は、主将が討たれたと判断した。
しばらくして、無線から、八貫の死亡が確認されたとの報告がある。
さらに、八貫の部下の諸将も、乱戦の中で戦死したとのことであった。

今こそ、降伏勧告の時だと確信した副棒庵 六貫は、台の上に立ち、
マイクを握りしめるようにつかむと、演説を始めた。

・・・。

スーパー・イラン軍の諸君
私は、副棒庵 八貫の弟、六貫である。
そもそも、私は家督を継ぐように、祖父である副棒庵 五十五貫から
確定されていたが、八貫が五十五貫を鍋で暗殺し、家督を継いだのである。
私が駆け付けた時には、五十五貫は、炭火小屋で燻製にされていたのだ。
しかも、正義の為に用意された怪獣宝玉や鉄人を悪用し、日本が困窮の
最中にある今日、私欲を満たそうと立ったのが真相である。
各地の悪党どもがこれに従った。

私は、家を追放され、今日まで雌伏の毎日であった。

副棒庵 八貫坊は、大教祖大帝王を名乗ったのである。

しかし、諸君、八貫はついに討たれた。
野望の果ては、戦いの中での最後となったのだ。
権威に媚び、若輩者を軽侮した馬鹿ものの最後とは、かようなものである。
さらに、八貫に従った裏切り者諸将もまた、討たれたと聞く。
諸君の戦う意義はもう存在しない。

平和になった故郷へ帰ることが先決である。

演説を行う中、それを周囲で聞いていた日本軍の将兵は、思わず涙をぬぐった。
それほど、素晴らしい演説である。

米軍から鹵獲した、性能の良いマイクでの放送は、イラン軍残存将兵に確かに
聞こえた。

演説からしばらくして、続々と投降者が現れたのである。
それは、演説の翌日から膨大な人数に及ぶ。

軍隊の組織を失ったスーパー・イラン軍は自壊に向かったのである。
残党がいくつか残っては居たが、バラバラになって陣地から逃亡した。
盟主を失った現地諸勢力も、降伏する者が続出。

ここに、大勢は定まったと言える。

残党のゲリラ戦闘こそあるが、もはやそれは治安の問題レベルと言えた。

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