九州橋頭堡23

「僧侶」

激戦が続く中、北九州戦線は泥沼の様相を呈しつつあった。

他方面への進撃を狙う新・日本国軍首脳は、この混沌を収拾するべく会議を招集した。
簡易的な建物を利用した司令部に、将校達は参集した。

「こんな所でモタモタしておったらまずいな」
「ああ。外道川の大将軍達が反撃を行うかもしれん」
「困ったな・・・」

数々の将星が並ぶ中、異色の将軍が起立した。

風呂戸 葉須磨中将である。
この人物については、様々な風聞があり、当人もボロボロの軍服を着用し続けている
汚らしい風貌からして、謎めいていた。

風呂戸は言う。

「スーパー・イラン軍さえ潰せば良いのであろう」

「確かに、外道川よりも混沌をもたらしているのは連中ですな」
堂崎参謀が言う。

「策がある」

「ほう、どんな策ですか」
松葉参謀が風呂戸の発言に不審な顔で聞く。

「巨大鉄像は、爆撃機の大型爆弾を大量に叩きこめばおそらく潰せるのでは」
「なるほど」
「それか、艦砲射撃とか」
ヒゲをなでながら風呂戸は言う。

「・・・武蔵でですか」
松葉参謀が言うと、風呂戸中将はニヤリとした。

「で、どさくさに紛れてスーパー・イラン軍の指導者を暗殺する」
「そんな無茶な」
堂崎参謀が青い顔をして反論する。
「そう簡単に暗殺なんて」
「やってみなければわからんだろう。大陸で養成した、忍者部隊を使え」
「なるほど、確か九州出身者もいましたので、選抜して暗殺をやりますか」
「おう」

「・・・で、その後はどうするんだ?」
第145師団長の山根和味中将が言う。

「わしの知り合いで人望厚い、副棒庵 六貫坊 と言うお坊さんが居る」

「???」
会議の一同、首をかしげる。

「誰だよそいつは・・・」
「この近くに住んでいる。六貫の説得で、イラン軍に与する兵士を投降させるんじゃ」
「そんなにうまくいきますかね」
「もちろんだ。六貫氏はここらでは有名な坊さんじゃからのう」

「・・・。」

かなり怪しい話だが、正直、打つ手も枯渇していた。

それから少し時間が経過し、指令部では次のようなことになった。

・忍者部隊から九州出身者を選抜し、暗殺部隊を送る。
・巨大鉄人は、野砲の砲撃で海岸に移動させ、艦砲もしくは航空攻撃で潰す。
・上記ふたつが成功した後、副棒庵 六貫坊が投降を呼びかける。

「解散!」

会議が終わると、風呂戸中将は、ものすごい勢いで、副棒庵 六貫坊の住む、笑門山
へ走って行く。

3時間後、風呂戸中将は、風呂敷包みを持って司令部に帰還した。

「凄い物をもらったぞ!!」

「?なんですか??」
堂崎参謀が中将を睨むように言う。

風呂戸は、風呂敷包みを広げた。

「ほう・・・」

「紫色に輝く、鉱石のように見えますが・・・」

「これぞ、伝説の鉄人の弱点、谷岡結晶Gよ」
風呂戸中将は、懐から巻物を取り出した。
「この地方の伝承で、谷岡結晶で鉄人を撃退したとある」

「それが、この谷岡結晶ですか・・・」

「うむ。六貫坊の奴が、秘蔵しておったのよ。説得には骨が折れたわい」
大笑いしながら、風呂戸は窓を眺めた。

忍者装束に、背中に九九式小銃を背負った特殊部隊が、集合している。
それは、忍者部隊から選抜した暗殺部隊である。

「よし、これで勝てるか」

風呂戸中将は誰ともなく呟いた。

その後、すぐに副棒庵 六貫が到着した。
「ふおっふおっふおっ」
白髪の、年老いた老人と言う風体だが、身のこなしはかなり素早い。
松葉参謀の目には、武道の達人に見えた。


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