九州橋頭堡17

「村本」

巨大鋼鉄神像の出現の報告は、各種情報源から拡散して行った。

八幡軍壊滅後、スーパー・イラン軍の走狗として真・日本国軍と相対していたのは
村本軍である。

元兵器開発技術員である、村本元告を主将としたその部隊は、彼が組織していた、
野球部員を中心に編成され、独自に開発された兵器で武装していた。

銃器、砲などの充実は、所隊の中で随一と言われている。
すでに各部隊も、八幡軍の壊滅後、仇討を狙い攻撃を開始していた。

部下からスーパー・イラン軍主力が長崎に向かったと言う報告を聞いた村本主将は、
戦意を新たにし、イラン軍の作戦を成功させるために現在の戦場を維持させるべく
その陣地を強固にするように命令した。

村本は、野球帽をかぶり、自らデザインしたユニフォームを着て、金属バットを
手に、部下を監督していた。

「八幡軍と我々は違うぞ」

そう豪語しながら、バットを素振りした。
豪快な人物。しかし、その心の中には、日本を征服し、一日署長として日本全国の
警察に君臨したいと言う夢があった。

「部下を整列させい」
未来の一日署長は、大声で伝達した。
陣前に並ぶ兵員達。およそ千名は居るだろうか。

「末定軍が奇襲的斬り込みを行うそうだ。3個小隊で、それぞれ練達の者を用意した」
部下に訓示する村本。

「我々は、我が砲撃で支援射撃を行うのだ」
村本が指で何かの合図を出した。走る部下たち。
しばらくすると、村本元告自ら設計したと言う山砲が運ばれてきた。
自慢の兵器だ。若い頃、ダイナマイト製造工場で立志苦行して設計したのだ。

部下が通信用紙をさらに持ってきて、村本に見せた。

「・・・ほほう」

紙には、末定軍が先遣隊3個小隊突入後、残る5個小隊全部で突撃を行うと書いてあった。

「末定軍も覚悟を決めたようだな」
村本はそう呟いた。


末定軍は、古来より我が国で細々とゲリラ戦闘を行う武装集団。
かの、「倭王 帥升」系列の勢力とも言われている。
その祖は九州勢力とも言われており、詳細は不明だが、末定恵三は征討将軍を名乗る。
そして、その背後には、「倭王」が存在しているのであろう。

今回は、利害の一致により共闘を進め、村本軍からは、村本式臼砲を取引していた。

「我々も呼応する。真・日本国を食い止め、スーパー・イランの勝利を助けるのだ」
村本はそう言うと、バケツいっぱいに貯めてある石炭を手に持った。
それが、彼の武器なのである。

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