大阪戦役6

「博労町事件」


大阪市役所を制圧した真・日本国軍は、市内の米軍の探索と外道川軍の残党狩りを開始した。
外道川軍残党の中でも市役所へ向かっている途中で忽然と姿を消した
大阪鉄ビン組は米軍に次ぐ重要目標だった。
他にもベムラーの第333保安隊等の要注意勢力はあったが、第333保安隊は大阪市役所陥落後は
米軍の指揮下に入っていると予想されていた為、現れるときは米軍と一緒だと踏んでいた。
それに対し大阪鉄ビン組は大した武装はしてないものの服装が市民と区別できないので
ゲリラ化すると危険と判断され早期撃滅を目標とされた。

前線が大阪城を片翼包囲する形で進む中取り残された敗残兵を捕まえる為、巡邏隊や憲兵隊
他にも様々な雑軍等が投入されていた。


博労町

夜の帳に包まれ静かになった大阪市内、昼間の喧騒が嘘のようである。
昼間に捕らえた敗残兵が大阪鉄ビン組の隠れ家の場所を吐いたため急遽巡邏隊が差し向けられた。
だが一つ問題があった。
敗残兵が吐いた隠れ家の場所が二ヶ所あり部隊を分けて探索する破目になった。

博労町の西端にて武装した集団が待機していた。
「準備は良いわね?」
長身でナイスバディな女性が鉄扇で指図する。
無言で頷く部隊員。

「御用改めよ!」
部隊指揮官を思われるその女性はドアを蹴破った。
「猫舌の手下だ!逃げろ!」
大阪鉄ビン組組員が逃げ出す。
「突撃!アタシに続きなさい!」
自ら一個中隊程の人数を率いて中へ突入した。
「春香!載乃(としの)!虎実(とらみ)!」
三人の将校を中心に部隊が続く。

「一番乗りは貰ったー!」
虎実が真っ先に中へ入っていく。
「ウリヤァー!」
載乃は次から次へと敵を斬る。
「ヤガモさんも斬られないでくださいよ」
春香が冗談を言いながら襲い掛かる組員を切り伏せた。

「ヤガモ」と呼ばれた女性…芹沢 光(せりざわ ひかり)大佐は鉄扇で組員を撲殺しながら指揮を執った。
(豊ちゃんがこの騒ぎに気が付いてくれればいいけど)
豊ちゃんとは部下の土方 豊中佐の事だ。
彼女は今別働隊を率いてもう一箇所の隠れ家を探索しに行った。
奇襲効果を高めるべく無線封止を行っていた為、戦闘開始前に伝令を走らせる事にしたが間に合うだろうか。
そんな事を思いながら戦闘を続けた。


「連隊長、沖田中佐が倒れました!」
血相をかえて兵卒が走ってきた。
「春香ちゃんが?!わかったわ早く後送しなさい」
芹沢大佐は驚いたが素早く切り替えた。

しばらくすると別の兵卒が走ってきた。
「連隊長、藤堂中佐が負傷、戦闘不能です!」
「今度は虎実ちゃん?いよいよ拙くなってきたわね」
今残っているの佐官は自分と載乃…永倉中佐しかいなくなった。


戦闘は続く。人数が少ない為、芹沢大佐は押されていた。

「猫舌の手下、私が相手だ!」
古代ローマの衣装を纏った白髪で長い髭の老人が現れた。
「やっと出てきたわね、大阪鉄ビン組組長 鉄ビン 四瓶 塾長!」
「いかにも」
「アタシを誰だか知って言っている?アタシは第四巡邏連隊の連隊長よ」
「第四巡邏連隊…通称『新撰組』か、まさかあの部隊の指揮官がこんな美しい婦人だったとは」
感心する塾長。
「決めたぞ、貴様を捕まえて私の妾にしてやろう」
「そう簡単に捕まらないわよ!」
斧の周りに木を巻きつけた、ファスケスと言う武器を振りかざす塾長。
すかさず躱す大佐。
捕まえる為に手加減する塾長。
生け捕りにして情報を聞き出したい大佐。
お互いに全力を出し切らない奇妙な戦いが続いた。

「ヤガモさん、苦戦しているみたいだな」
「その声は豊ちゃん!」
視線を塾長に向けたまま声に答える大佐。
別働隊を率いていた土方 豊中佐が到着したのだ。
これにより一気に形勢は第四巡邏連隊側に傾いた。

「くッ、小娘が増えたか…まあいい貴様も妾にしてやろう!」
塾長は劣勢をものともせず奮戦する。
だが組員達は既に鎮圧されたか逃亡し残っているのは彼一人である。
包囲される塾長。
ついにファスケスを切り落とされてしまう。
芹沢大佐は鉄扇を塾長の首の手前で止めてこう言った。
「おとなしく降参する気になった?」
「む、その技量実に見事…わかった貴様らの武勇に免じて投降しよう」
あくまでも自分が上だと言いたいらしい。
「はいはい、お爺ちゃんこっちですよ〜」
「年寄り扱いするな!」
機嫌を損ねないように言っているのだが
芹沢大佐の対応は老人を介護する介護士の態度そのものであった。


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