大 阪戦役4

「野田・福島の戦い」


米・外道川軍は淀川防衛の為に福島区に保安隊を展開していると言う情報を掴んだ真・日本国軍は
山陽道軍主力を此花区・福島区の淀川を挟んだ対岸である西淀川区・淀川区に展開させていた。

淀川の制河権を手にいれるべく真・日本国側は淀川に居る
外道川軍の保安庁警備隊(つまり水上部隊)に対して小規模な戦闘を仕掛けていた。
そして河口付近のそれが殆ど駆逐された事を確認して真・日本国軍は舟艇隊の遡上を開始した。


淀川河口

浅吃水の滑走艇(エアボート)隊に護衛されながら特設砲艦「開陽丸」を旗艦とした
特設砲艦連隊はゆっくりと淀川を遡上する。
今回は少しでも吃水を減らすため、武装・弾薬を減らすという賭けに出た。
特設砲艦隊の先頭は通称「甲鉄艦」こと「東」だがこの艦は通称通り装甲を持ち、
E型戦時標準船改造だが防御力では特設砲艦隊最強である。

「東」の艦橋では第二特設砲艦隊の指揮官である増田 虎乃(ますだ とらの)海軍中佐が
不安そうに淀川を眺めた。
「上流は敵の支配地域、機雷を流すには絶好のポイントね…」
「その為の滑走艇隊じゃないですか、まあ本艦でも警戒はしていますが」
艦長の中島 四葉(なかじま よつば)が不安を解消しようと答えた。
増田中佐は艦首に目をやると芬蘭製三〇糎迫撃砲改造主砲が福島区の方を睨んでいた。


福島区

「攻撃の準備をしろぉー!ジャガイモの芽はいつ食べてもうめぇな」
モヒカン頭の男がジャガイモの芽を食べながら指揮を執っていた。
第913保安隊隊長、新浜尾 行野郎だ。
彼は不良上がりで外道川式70mm迫撃砲の開発者でもある。
好物なのか常にジャガイモの芽を食べている。
「隊長!ネコジタの手下が淀川を遡って来ます!」
伝令が彼に伝えると彼は芽を食べ終えたジャガイモを握り潰した。
「来たかぁ、ヤツらを全員淀川に沈めてやるぜぇ!」
隊長の一言に隊員たちの士気が上がる。


淀川

刻一刻と時が過ぎる中、のんびりと特設砲艦連隊は福島区に近づいた。

「10数えたら攻撃だ。10…9…8…7…ヒャァ、我慢できねぇ、0だ!」
新浜尾隊長が痺れを切らして攻撃命令を下す。
175門もの外道川式70mm迫撃砲が一斉に火を噴いた。
迫撃砲の発射位置を特定した真・日本国軍は手持ちの大砲を並べ砲撃を開始した。
特設砲艦連隊に頭上から迫撃砲弾が降り注ぐ。
外道川式70mm迫撃砲は外道川首相が国産化を狙って開発を命じたものだ。
見た目は普通のストークス系迫撃砲で生産性が極めて良い反面、
粗悪で特に命中精度と耐久性に疑問符が付く代物だった。
その為迫撃砲弾の2割は明後日の方へ飛んで行き、淀川周辺に落ちたのは半分以下。
さらに特設砲艦に命中したのは1割を切っていた。

だが予想よりはるかに損害が少ないとはいえ、
非装甲の特設砲艦にとっては頭上から降り注ぐ砲弾は脅威だった。
「東」以外の被弾した艦は火災が発生した。
備砲と弾薬を減らしたのが吉と出て火災はすぐに鎮火したが、その隙に新浜尾隊長は次の一手を打っていた。

鎮火したと思ったら突然また火災が起きた。
その直後何かに気付いた滑走艇隊が火器を発砲する。

「ヒャッハー、汚物は消毒だー!」
新浜尾隊長は自ら火薬式のジャガイモバズーカを発射する。
ジャガイモバズーカから発射された焼夷弾が特設砲艦に命中し艦を焦がす。
彼はジャガイモバズーカの名手としても知られていた。
彼らは小型のモーターボートや水上オートバイに分乗して身動きの取れない砲艦隊を襲った。
真・日本国軍が手を焼いた外道川政権製の兵器の一つにこの水上オートバイがある。
元は在日米軍がレジャー用に要求したものだったらしいのだが
この小回りの利く乗り物は真・日本国軍には無い兵器として逆上陸戦を通して恐れられていた。

「撃て!連中を早く蹴散らせ!」
どの砲艦でも似たような命令が飛び、ありとあらゆる小火器が指向された。
次々と撃たれる外道川兵。
次第に数を減らしていくがそれでも新浜尾隊長は攻撃を続けた。
そして彼の番が来た。
発射準備を終えたジャガイモバズーカの中の焼夷弾に銃弾が命中した。
炸裂する焼夷弾。
哀れ新浜尾隊長は火達磨になって水面に落ちた。

第913保安隊の迫撃砲部隊も激しい砲撃に遭い壊滅した。
山陽道軍が福島区に到着した頃にはすでに残りの外道川軍は撤退したあとだった。



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