大 阪戦役17

「五糎七平射歩兵砲」


中佐が勝ったことが告げられ、リングを降りようとするが彼女はその場で倒れた。
その混乱に乗じて大将はコルテック・ハリケーン少将に連れ去られてしまった。
長崎山 霧島中佐はもう戦闘不能なので後送された。
その後、副長が指揮を執ったが落下傘大隊は結局、大将は発見できなかった。


鷲平 勝乃中佐指揮下の混成匍匐兵大隊もクレーターから大阪城地下へ入っていた。
「匍匐兵」とはナメクジ兵の事だがその前に「混成」が付く、つまり人類との混合編成と言う意味である。
ナメクジ嫌い(正確には軟体動物至上主義嫌い)の彼女が旧ナメクジ・ドイツ軍の生き残りの
匍匐兵を指揮するとは皮肉以外の何ものでもなかった。

九五式実包(6.5mm*30)が使えるように改造したNMP44(史実のMP44)を持った匍匐兵達が駆けずり回る。
「長崎山大隊から伝令!『大隊長負傷により後送、敵大将は重傷を負いながらに逃走。
敵参謀長も同行している模様』」
伝令が勝乃に伝える。
「敵大将は手負いよ、まだ近くに居るはず。徹底的に探しなさい!」
彼女はそう言って自らも改造NtG45(M)突撃銃《史実のStG45(M)》を持って探す事にした。
他の各部隊も大将捜索に加わり着実に追い詰める。


「鷲平大隊長、敵参謀長が立て篭もっている地点を特定しました!」
伝令が走ってきた。
「本当?!案内しなさい、後、男谷少将に連絡!」
勝乃は歩兵団長の男谷 信子少将への連絡を指示して自らも駆け出した。


科学者の様な身なりで、逆台形の頭に「N」と刺青が入った
片手が義手の男が数名の部下と共に立て篭もっている。
彼こそ参謀長のコルテック・ハリケーン少将だ。
彼は大将を先の攻勢を生き残ったパラノウィッチ中将に
託し自らは囮になって真・日本国軍を引き付けていた。

そこに勝乃や男谷少将が駆けつける。
参謀長が立て篭もっている火点はブローニング水冷中機関銃が据え付けてあり
一本道の通路で迂闊には近づけない。
隠し出口と思われる通路はこの先だろう。
無反動砲や噴進砲は発射煙が激しくて狭い通路では使えない。
一〇〇式重擲弾筒の直射では射程が足りない。
米製37mm対戦車砲は大きすぎて通れない。

これらの事を踏まえて一つの結論が出された。
五糎七平射歩兵砲を撃ちこむと言う事だ。
この五糎七平射歩兵砲とは市街地戦等狭いところでで使う為の火砲で
砲弾は米製57mm無反動砲の物を流用。
薬莢は亡命ナメクジ技術者が齎した高低圧理論を応用した物。
砲身の長さは57mm短加農(八九式中戦車の主砲)よりやや短い。
駐退機を備え、三脚は十一年式平射歩兵砲/二十五粍手動砲の物だ。
これに今回特別に防盾を追加した物を用意した。

歩兵に担がれて五糎七平射歩兵砲が持って来られた。
即興で防盾と車輪が取り付けられる。

歩兵に押され前進する歩兵砲。
防盾に速度を失った銃弾が当たった。
分隊長が指示をだして弾薬筒が装填される。
歩兵砲が発砲。
火点の射撃口の上に命中した。
さらに修正射を行う。
何発か撃ち、ようやく射撃口に砲弾が飛び込んだ。
中で榴弾が炸裂する。

「今だ!」
狭い通路を歩兵が縦列で突撃する。
火点を迂回し、射撃口に九九式手榴弾(乙)を投げ込み
破裂を確認して扉から突入した。


中には恐らく機関銃手と思われる死体があった。
敵参謀長の死体は見当たらない。
床には血痕と足を引きずった跡がある。
恐らく負傷して逃げたのだろう。
「この跡を追え!敵は負傷しているぞ、生け捕りにしろ!」
分隊長が兵卒に追う様に指示した。

勝乃も火点の横を通った。
銃座の影から光る物を見つけた。
だが、勝乃は気付かないフリをしてその場を立ち去った。
そして物陰の死角に入った事を確認して振り向く。
兵卒に止まるように手信号で伝えて、その物影に試しに手榴弾を投げ込んだ。
慌てて飛び出す人影。
周囲にいる兵卒を射撃する人影。
勝乃は突撃銃をその人影に向かって発砲するが、素早い上に狭い場所なので操作しずらい。
突撃銃を捨て、モーゼルM1912/14を抜き放ち発砲。
だが、当たらない。勝乃はその影を追った。

「ネコジタの手下め、死ね!」
凄まじい発射速度の機関銃の銃声が響く。
蜂の巣にされる兵卒。
「ガトリングか!」
物陰で射撃を凌ぐ勝乃。
「手榴弾を投げるから炸裂したら一気に突っ込むわよ」
近くの兵卒に指示をする。
環を引っ張り引索を抜く、少し待って手榴弾を投擲した。
破裂する九九式手榴弾(乙)。
すかさず突撃した。
だがすでに、人影は倒れていた。

「参謀長のコルテック・ハリケーン少将か、やっぱりさっきのは罠だったのね」
勝乃は人影を写真と見比べ確認した。

大阪に居る米軍で残る大物は負傷したナニウォ・パラッチ大将とパラノウィッチ中将だけだ。


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