大 阪戦役16

「異種格闘技」


大阪城内に溢れる真・日本国軍。
地上を制圧し、クレーターから地下へ侵入を試みる。
途中、火点にぶつかり損害を受ける部隊もあった。

第一線で動かせる兵力不足の真・日本国軍は大阪城制圧の為、落下傘部隊まで投入した。
その中の一つである、長崎山 霧島中佐の大隊も投入された。
落下傘部隊ともなれば精鋭である上に一般歩兵部隊より軽装備での戦闘に慣れていたため
損害も少なく地下施設を制圧していく。

彼女等はとんでもない大物と遭遇する。
メリケンサックを装備した男が次々と兵卒を殴り倒していく。
咄嗟に腰に下げていた二尺八寸の勤皇刀「村正(偽銘)」を抜き放つが
メリケンサックに受け止められてしまう。
「そんなナマクラ・ソードでこの聖なるメリケンサック
『チンクク』を破壊できると思ったか?」
男は余裕をかまして言った。
それを見て中佐は後ろに飛び退いた。
服はところどころ破れているが階級章は残っていた。
その階級章から察するに陸軍大将だ。
「まさか、あーたがナニウォ・パラッチ大将?」
中佐は驚きながら尋ねた。
「そうだ小娘、首が欲しければかかって来い!」
答える大将。
「投降する気は無いようだな」
「あたりまえだ」
中佐の問いに大将は明確に拒否した。

「相手が『聖なるメリケンサック』か、ならばこれで対抗すっか」
勤皇刀を納刀して軍服のポケットから何か取り出した。
「それはシントーシュラインにあるシメナワと言うヤツか」
大将は中佐の取り出した物に驚いた。
それは注連縄で出来た指だし籠手(オープンフィンガーグローブ)のような物だ。
「上海で死神軍とやりあった時も南米で悪魔族とやりあった時もこやつに助けられたな」
中佐は懐かしむように注連縄籠手を装着した。
「聖なる力には聖なる力で対抗するつもりか…面白い、ついて来い!」
そう言って大将は中佐に背中を見せて歩き出した。

「敵に背中を見せて撃たれる心配はしないのですか?」
中佐は大将に尋ねた。
「そんな事を恐れていては大将は勤まらない」
前を見たまま大将は答えた。
しばらく歩くと広い部屋に出た。
その部屋の中央にはリングがあった。
「この服は動き辛くてしょうがない」
そう言って大将は軍服を脱いだ。
その姿は上半身裸でトランクスを穿きリングシューズを履いていた。
そして大将はリングに上った。
「本気と言うわけだ、ならばオドンも本気で行かす」
中佐も軍服を脱いだ。
「シントーのシャーマンの服か、軍服の下に着ていたとは」
大将も流石に驚いたらしい。
「こら集中でくる」
そう言って中佐もリングに上る。
「こちらはヘビー級、そっちはウェルターかスーパーライト級だろうハンデはいるか?」
大将は余裕だ。
「いらん、聖なる力はこっちの方が上だけん」
中佐も自信満々である。


「ミックスド・マーシャル・アーツの始まりだ!」
突然現れた科学者の様な格好をした男が発言する。
そしてゴングが鳴らされる。
突進する大将、半身に構える中佐。
大将はいきなり右ストレートを打ってきた。
左手で弾く中佐。
更に大将はジャブを連打してくる。
躱しきれなかった何発かが命中する。
その後の戦術を切り替えた大将の凄まじい発射速度のジャブをまともに受けてしまう。
消耗していく体力。
(…虎臣のポンポンパンチは発射速度の速い猫パンチだが、こら痛いな…)
朦朧とした意識の中で中佐は立っているのがやっとだった。
第一ラウンドが終わる。

「中佐、大将のセコンドは参謀長のコルテック・ハリケーン少将です」
大隊副官が水を渡しながら言った。
「ああ、やっぱし」
中佐はやはりかと思いつつ口の中をゆすぐ。
「半身に拘らず思い切って敵の内側に入ってみては?」
副長が言う。
「オドンも同じ事を考えてた」
中佐は副長の意見に同意した。

再びゴングが鳴る。
再び大将が突進してくる。
これに対し中佐も突進した。
中佐は身を屈めてパンチを躱し、突進状態のまま中段正拳突きを見舞った。
大将の腹部に直撃、確実にダメージを与える。
その後は素早さを生かして中に入り大将にダメージを重ねさせた。
第二ラウンドも終わった。

第三ラウンドが始まった。
大将も作戦を切り替えたらしく中佐に対して距離をとろうとする。
大将のスピードと中佐の身軽さとの勝負となった。
お互いにスタミナを消耗した状態で素早く動き回った為
だんだん素早さが落ちてきた。
スタミナ切れ間近でひるむ中佐。
そこへ容赦なくストレートを打ち込む大将。
ギリギリのところで躱し最後の力を振り絞りアッパーを見舞う中佐。
中佐の渾身の一撃は大将の顎を捉えた。
大将の体は宙に浮いた。
そしてリングに叩きつけられた。
カウントが数えられる。
10数えられゴングが鳴った。


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