大 阪戦役15

「大阪離脱の余波」


第555師団が大阪市から離脱し師団長は行方不明になった事が大阪城に知らされた。
「何を考えているんだ!あの男はステーツを裏切るつもりか」
ナニウォ・パラッチ大将は執務室で激怒した。
「いえ、恐らく堺か信太山の友軍と合流して再起を図るつもりだったのでしょう」
参謀長のコルテック・ハリケーン少将が冷静に想像した。

「真・日本国軍が堀を埋め立てています!」
参謀が血相を変えて入って来た。
「どの堀か言え!」
八つ当たりをする大将。
「外側に位置する全ての堀です!」
「なんだと?!」
参謀の言葉に驚く大将。
「遂に総攻撃を始めたか!」
参謀長は地図を見た。


「作業は順調のようね」
深谷 獅子音(ふかや ししね)海軍築造中佐は設営連隊司令部で作業が順調である事を確認した。
彼女の隊は南外堀の埋め立てを命じられた。
背後の戦車隊や砲兵が敵の火点を吹き飛ばす。
すでに簡単な歩兵橋は組みあがり投入を待っている。
敵弾下で埋め立て作業に従事するのは工兵戦車達だ。
ベースはシャーマン・ジャンボやチャーチルだ。

次から次へと塹壕に歩兵が配置され必死の反撃を行ってくる。
だがそれでも今や火力で優位に立つ真・日本国軍は無慈悲な攻撃を続ける。
堀の一部が埋まると工兵戦車は堀の内側に入り砲塔を回し抵抗する敵を撃った。
工兵戦車が堀の内側に到達すると同時に戦車部隊が埋め立てた道を走り次々と中へ入る。
無論、米軍の反撃で擱座する物もあったが、それを押しのけて入っていく。


「薩摩一番隊が一番乗りだ!」
桐野 半(きりの なかば)中佐は自ら兵を連れて大阪城内に突入した。
そこにはラフな…いやラフすぎる格好の男が彼女を待ち受けていた。
「あの時の、真・日本国軍将校か…腕が立つようだな」
そこに立っていたのはビリビリに破けた袖はどこかへ消えて
ただでさえボロボロの服だったのが余計ひどくなったベムラー ヨシカズだ。
「あの時の決着を今つけるまでだ!」
桐野中佐は軍刀の柄に手を掛けて近づいていく。

「ウォォォーーーッ!」
吸水カップを構えて突進してくるベムラー。
桐野中佐はまだ抜刀しない。
ベムラーは吸水カップを突き出して襲い掛かる。
「!」
桐野中佐は目にも留まらぬ速度で抜刀した。
見えたのは刀ではなく7回ほど刀に反射した光だ。
血払いをして納刀する中佐。
納刀した瞬間ベムラーは血まみれになって倒れた。
「スゲー!さすが『人斬り半』だ!」
「今の伝説の『七閃抜刀(しちせんばっとう)』だよな?」
兵達が歓喜の声を上げて近づいてくる。
「相手のコンディションが完全だったら勝てたか怪しかった」
傍目には一瞬でけりがついた様に見えたが本人にとっては冷や汗物だったようだ。

二人の戦いが決着がつくごろ、各外堀の一部が埋め立てられ通行可能となった。


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