大 阪戦役14

「もぬけの殻」


「猫舌提督と小鳥遊提督は無事のようだが、それ以外は作戦は順調だ」
スカンク・エイプス中将はそう呟いていた。
彼は「A」戦闘団と共に行動していた。
「B」戦闘団も長居公園に到着したようだ。

「中将、大変です!」
通信兵が慌てる。
「どうした?敵の反撃は想定内のはず」
中将は首をかしげた。
「いえ、それが…公園内は蛻の殻なんです」
通信兵が言った。
「『リトル・デーヴィッド』はあるのだな?」
中将が尋ねる。
「はい、砲弾も残したままです」
通信兵は答えた。


少し間を置いて中将は何か言おうとした時、砲声が聞こえ始めた。
公園の近くに砲弾が着弾した。
「ヤツらは『リトル・デービッド』諸共オレたちを吹き飛ばすつもりだ!」
師団参謀が気が付く。
「いかがされますか閣下?」
別の参謀が中将に問いかける。
「作戦は失敗だ!このまま敵中を突破して味方の勢力圏まで行く!」
突然、吼える中将。

「何故ですか、閣下!」
参謀が尋ねる。
「解らないか?肝心の猫舌提督は無事、
『リトル・デーヴィッド』は最初から使い捨てにするつもりだった。
砲撃が止んだら伝習隊と衝鋒隊の残存兵力がこちらへ攻めてくる。
おそらく他の部隊も包囲攻撃に加わるだろう。
ならば、意表を突いて敵中を突破し味方の勢力圏まで行った方が良い」
中将は噛み砕くように説明する。
「それでは大阪城は…」
参謀が何かにすがるように中将を見た。
「残念ながら今我々が戻ったとしても真・日本国軍に押しつぶされるだろう」
中将は俯いた。

「…解りました、師団全力を持って味方の勢力圏を目指しましょう」
参謀が渋々従った。
「いや、各部隊を細切れにして敵の間隙を縫う」
中将は言った。
「それでは、各個撃破されかねないかと」
「師団で動いた場合、敵にこちらの意図が容易に察知されてしまう。
あくまで攻勢の為の進撃をしているフリをしなければいけない」
中将の説明に他の司令部スタッフ達も納得したようだ。

「キャンドルー中佐」
中将が散会したスタッフの一人に声をかけた。
「我が師団指揮下の外道川私設軍の兵は君に預ける」
「はっ!」
キャンドルー中佐は承知すると敬礼をして去っていった。


砲撃が終わり、真・日本国軍が長居公園に達した時には既に第555師団の兵は居なかった。
真・日本国軍は捜索を開始したが見つかるのはどれも小規模な部隊で師団主力は見つからなかった。
それに中将の行方もつかめなかった。
ただ後の時代の伝承によると中将は脱出途中で真・日本国軍に見つかり
手元にあったワインのビンを割って勇敢に戦って死んだとも
無事に味方の勢力圏に達したとも
逆上した獣人兵に殺されたとも言われている。


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