国会議事堂の戦い4

「虎より怖い狐」

「テーッ!」
猫舌の口から射撃命令が下る。
議事堂前の猫舌部隊のありとあらゆる火器が突撃して来る外道川軍に指向され火を噴く。
特にM2.50を4丁搭載したM16対空自走砲の射撃は壮絶だった。
突撃してくる外道川軍を次々と肉片に変えた。

だが外道川軍とて黙ってやられるほどお人好しではない。
巨大な岩石からカニの手足が生えた敵…日本大将軍 ジョニー・ベヘモンスの中央から突き出た大砲が火を噴いた。
巨大な180mm噴進弾がM16を直撃し跡形も無く消し飛ばした。
「うわぁッ!」
更に追い討ちをかける様に赤い人型の機械…公比居大将軍 ポッカイロ・龍五郎の破壊光線がクロムウェルを捉え爆発させた。
爆風で吹飛ばされる者、破片で負傷する者が続出する。

「岩丘造兵中佐、浦賀中佐、回避行動をとれ!」
「周囲に歩兵が多すぎてとれません!」
猫舌は指示を出すが予想外の攻撃に動揺が広がっている。
「造兵大将!直参と神戸・鷲平・人目中佐を連れて中に突入してください、ここの指揮は私が採ります!」
風呂戸陸軍中将が申し出た。
「分かった、後を頼む」
猫舌は中将に指揮を任せ突入する事にした。

「儂と共に進め!突撃ィーッ!」
「ウオォォォーーーッ!」
歩兵4個大隊が猫舌と共に駆け出した。
突撃してくる外道川軍に正面から突っ込む形である。
援護射撃の擲弾や迫撃砲弾が頭上を越え外道川軍に着弾し敵兵を吹飛ばす。
「死にたくなければそこをどけぇーッ!」
榛名は三尺二寸の延寿国資…通称「夜影斬」を振りかざし敵兵を切りつける。
「鬼だ!鬼が居るっ!」
榛名の気魄に外道川軍兵士が崩れだした。
「今だ!突っ込め!」
猫舌が叫び、榛名を先頭に議事堂内に雪崩れ込んだ。

猫舌旗下の4個大隊が突入する間に、戦車中隊と自走砲中隊は回避行動をとりながら砲撃を繰り返す。
クロムウェルが煙幕を張り、チャレンジャーがベヘモンスに17pdr弾を命中させる。
自走砲部隊もポッカイロに命中弾を与えた。

さらにもう一発17pdr徹甲弾がベヘモンスに命中した、先ほどから数えて何発か命中している。
ベヘモンスの動きが鈍くなった。
「ぐっ…小癪な!ウォォーッ!」
ベヘモンスは凄まじい勢いで両腕のカニの鋏を振り回し突っ込んで来た。
腕の直撃で横転する戦車、逃げ惑う歩兵。
「三春ちゃん!」
「解ってる!」
虎臣は三春に支援を要請した。
「どおりゃぁ!」
三春は両手に120mm迫撃砲弾を1発ずつ持ち放り投げた。
放物線を描いてベヘモンスに向かって飛ぶ砲弾。
砲弾はそのままベヘモンスの180mm噴進砲の砲口に入り爆発した。
「グォォォーーッ!」
小爆発を繰り返し間をおいてベヘモンスは爆発した。

次第に追い詰められるポッカイロ。
しかし破壊光線で迂闊に近づけない。
「御姉様が頑張っているのなら私はそれ以上頑張らなくては!」
阿武隈はポッカイロを見据え、室蘭杉年二尺四分を構え突進した。
「やぁーーーッ!」
素早くかつ凄まじい勢いで間接に突きを入れた。
通称「阿武隈急行」、彼女の御姉様に対する激しい思いが形になって出来た技だ。
「バカな、ゴミ以下の連中に…グアァァッ」
彼もまた旅立った。

「ウォォーーッ、まだ負けんぞー!」
将鞭大将軍 バルバリーゴ・天婦羅は二つの口から火を噴きながら鞭を振るい風呂戸中将旗下の将兵を血祭りに上げる。
「次は貴様だー!」
バルバリーゴは菊代に向かって突進してくる。
「血には血を、火には火を。狐火!」
複数の炎がバルバリーゴに向かって飛んでいく。
「なんの!」
鞭で炎をかき消し、さらに菊代に近づく。
鞭で菊代を叩こうとして振りかぶった。
「すばやい茶色のキツネがのろまな犬を飛び越える」
菊代はそう言って跳躍しバルバリーゴの二つの首を掴みそのまま地面に叩き付けた。
「おのれ!ピザのクセにすばしっこい!」
「!!」
菊代の眼つきが変わった。
彼女の前で体系を指す意味での『ピザ』は禁句だ。
ポニーテールの位置から垂れている三つ編みで容赦無くバルバリーゴをビンタした。
(あーあ、怒らせちゃった…あいつ怒ると怖いんだよ。
今は『狐その尾を濡らす』か、次の技は何かな)
虎臣は呑気に見ていた。
「おねえちゃん、手伝って!」
青筋を立てた笑顔でこちらを一瞥する菊代。
「ああ、分かった(次は『虎の威を借る狐』)か…ブラッディ・パラライザー!」
虎臣は毘沙門堂護郷二尺五寸一分でバルバリーゴの両首筋に一撃ずつ斬撃を加えた。
「グァァ、体が痺れて動けない」
バルバリーゴは必死に動こうとするが名前通り相手を麻痺に追い込む技をくらい動けない。
ゆっくりと榛名とは違った凄まじい殺気で菊代が近づく。
「ま、待て、降参する。だから…な?」
常人なら失神する様な圧倒的な殺気に必死に口を動かすバルバリーゴ、
だがその頭上には無慈悲な笑顔で彼を見据える菊代が居た。
「聞こえませんね~まあ、命乞いしたって許してあげませんが」
菊代はそう言ってシカゴタイプライターの銃口を彼に向ける。
口を魚のようにパクパクさせるバルバリーゴ。
「では、さようなら」
タイプライターの銃声とバルバリーゴの断末魔が聞こえた。



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