九州橋頭堡11

「八幡軍」

そもそも、八幡軍とは、元製鉄所員で、公職追放にあった八幡小笠が謀反を企んで決起した
軍であった。

その数、数千名とも言い、イラン帝国と友好関係であったので武器を供与されていたと言う。
八幡の部下は、八幡小笠に騙されて悪政を打倒する目的で決起した久留米市民であった。
しかし、八幡小笠もただの製鉄所の幹部上がりの野心家であった。
挙兵の際に米軍兵器を鹵獲し、イラン軍から提供された武器とあわせて装備していた。
だが米式兵器の扱いには慣れていない者が多く、訓練は未了であった。

今回の一戦で、一敗地に塗れたのも、砲兵を扱う者が居なかったことも原因である。

だがこの戦闘で、馬上で鞭をふりかざして奮戦していた八幡小笠は、銃弾を胸に受けて重傷。
戸板に運ばれて敗走する部隊の中で瀕死の状態であった。

逃走する途中、イラン帝国との連絡を取ろうとしていた部下の動きをよそに、八幡小笠はその
77歳の生涯を閉じた。陣頭指揮を執ることは良いことであったが、運が悪かったと言えよう。
最後に、しなびた松茸を齧り、口にその味を残して冥界へと旅立った。

部下たちは、そもそも八幡小笠の独裁的方法に従っていたので幹部たちが会議を行うことに
なった。

野営する幕舎にメンバーが集う。

猫舌派の投降勧告はすでに彼らも知っていた。

投降派である、八幡小笠の甥にあたる八幡満月は将器が伯父より無いと認め、投降を主張。
徹底抗戦派である、長江肋骨は激怒してイラン帝国軍に忠誠を誓うと言い張る。

そのうち、真・日本国軍の将である、馬菜名獣酢が放った相州忍者の一隊が、投降勧告の矢文
を八幡軍に放ち、それを読んだ将兵らは四分五裂になった。

「もう部隊の体をなしてはおらん。降伏しようぞ」
そう宣言する八幡満月。

ついに激怒した長江肋骨は、拳銃を手に立ちあがった。
ちなみに長江肋骨は、極悪人を地味に輩出している長江一族の者である。

「国賊め!イラン帝国に刃向かう国賊が!」
「ちょっと待ってくれ。貴公は日本人なのか?それともスーパー・イラン人なのか?」

長江肋骨は、拳銃を突きつける。
「もう良いだろう話の都合でお前は死ね!」

「え?ちょっと・・・」
顔色を変える八幡満月。

ズキューン。

崩れ落ちる八幡満月。

「国賊め、思い知ったか」
満足そうな長江肋骨。
痩せた、青白い体をなぜかプロイセン軍の軍服に包んでいる彼は、ピッケルハウベをかぶると
周囲に大声で号令した。

「これより、八幡軍は長江肋骨が指揮を執る。これより反転して総攻撃をかける」
その威勢により、部隊の混乱は、一時的に収まったかに見えた。
だが士気の低下は、ギャング並みの指揮権交代劇により間違いなく広がっていた。

「野砲を出せ」
「はあ、しかし、野砲を使った経験者は居ませんが」
「敵の砲兵に対抗しないと勝てない」
「はあ、しかし、野砲を使った経験者が・・・」
そう答える砲兵担当の浜根タケノコ中納言に対して、長江肋骨は拳銃を構える。
「お前も死にたいのか?米軍野砲を使えと言っている」
顔面蒼白になって、浜根タケノコは答えた。
「すみませんでした。すぐに野砲を用意します!」

浜根タケノコはあわてて走り出した。

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