大 阪戦役11

「小さいダビデ」


「信濃」が無事に真・日本国の勢力圏に入った頃、大阪市では…。

結果から言えば山県中佐の作戦は米・外道川軍の反撃で頓挫した。
勢い良く前進していた各隊は米軍の猛攻に押されて退却し
一番進軍速度の遅かった乃木大隊が先頭になっていた。

だが、この攻勢は無駄ではなかった。
第427師団を撃破し師団長を戦死に至らしめるという効果はあった。
それに米軍は戦線を縮小する為に第893師団を真田山町から撤退させる事を実行した。


「中佐、マル『デ』装置の設置が完了しました」
「うん、解った。猫舌大将にその事を有線電話で連絡して」
中佐と呼ばれたボサボサ頭の背の高い男…いや、その大きな胸は女性である事を表していた。
六尺七寸に迫る長身、Fカップの巨大な胸。
真・日本国のテクノクラートの一人、有坂 成海陸軍中佐だ。
彼女は今回、独立重砲兵大隊を指揮していた。
彼女が出張ってくるような重要な装備…それが「マル『デ』」装置だ。
正確には○の中にデと書くのだが表記の問題でこう書く。
彼女の視線の先には巨大かつ極めて太い円筒状の物があった。
これこそ「マル『デ』」装置の砲身である。

「中佐、猫舌大将から砲撃開始命令が出ました」
通信兵が言った。
「大阪城に対して砲撃開始!」
「大阪城に対して砲撃開始!」
部下が復唱する。
「撃てーッ!」
部下が命令する。
凄まじい砲声と砲煙を撒き散らし「マル『デ』」装置は火を噴く。

しばらくして大阪城の周囲で大爆発が起こる。
目標とのズレを修正して更に発砲する。
何発か修正射を加えているうちに遂に砲弾は天守閣に直撃した。
歓声があがる。

「マル『デ』」装置…その正体は米軍から鹵獲したリトル・デーヴィッドである。
元は米軍が日本本土上陸作戦時に持ち込んだ物だが、持ち帰るのが面倒で日本国内に放置。
その後朝鮮戦争が勃発し一進一退を米軍は続けるが朝鮮で使う為に整備して保管していた。
それを真・日本国が鹵獲しここで使うに至る。

堅陣を破砕する巨弾はその威力で恐れられたが、いくつか問題があった。
設置に時間が掛かりすぎる上に発射速度が遅い。
さらにシステムが巨大な為、航空攻撃や対砲兵射撃の良い的である。
実際、制空権が確保されるまで配置できなかったし、米軍砲兵が粗方片付くまで大阪城への攻撃は控えられていた。
いかにこの装備が重要かと言うと猫舌の本陣より後方に位置している事が全てをものがったている。


米軍側もこの砲撃には肝を潰した。

大阪城内

「パラノウィッチ中将、スカンク・エイプス中将!」
ナニウォ・パラッチ大将は二人を呼び出した。
「『あの砲撃を止めろ』ですか?」
パラノウィッチ中将はパラッチ大将に尋ねた。
「ああ、このまま砲撃を続けられたらココも持たない」
着弾で揺れる司令部。
「解りました」
そう言って二人は消えた。

大阪戦役における最後の米・外道川軍の攻勢が開始されようとしていた。


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